安野光雅さんの絵本はいろいろありますが、この絵本は、1ページごとに唱歌とその唱歌に合った絵が書いてあります。
前半は、「ふるさと」、「朧月夜」、「こいのぼり」などの春の歌から始まり、夏秋冬の歌が続き、その歌に合った日本の昔の風景画が書かれています。
後半からは絵のタッチが変わり、版画か切り絵のような感じになり、「証城寺のたぬきばやし」から始まっています。
昔の懐かしい歌ばかりで、私が知らない歌もありますが、安野さんの絵はとても癒やされます。
この絵本を買ったとき息子はまだ3歳でしたが、その当時の保育所の所長先生が「ふるさと」が好きで教えてくださっていたので、息子は意味はわかっていませんが、「ふるさと」が歌えるようになっていました。
「ふるさと」のページは、山や田んぼのある昔の風景の中で子ども達が遊んでいて、とても穏やかな絵で、何回か息子と一緒に見ていました。
その後、私の祖母が突然、危篤状態になり、病室で歌ったのが、この「ふるさと」です。祖母は意識がなく喋ることはできませんでしたが、祖母の手を握って、息子と一緒に「ふるさと」を歌うと、祖母は、一緒に歌おうとしていたのか口を動かしていました。
祖母は、亡くなる数ヶ月前まで田んぼや畑仕事をしていて、「ふるさと」のページに書かれた絵と同じような田舎に住んでいました。最期に会話はできなかったけれど、一緒に歌えて良かったと思います。
1977年5月20日発行
編 芥川也寸志
絵 安野光雅
株式会社 講談社