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コラム
COLUMN



岸和田生活保護裁判
          


 
 

岸和田市の生活保護申請『却下』の取り消しを求める裁判は、2013年10月31日、大阪地方裁判所で完全勝利判決を勝ち取り、2013年11月14日、岸和田市が控訴しないことを表明し、完全勝利が確定しました。みなさまのこれまでのご支援に、感謝申し上げます。
 
 弁護団主任 半田みどり  
   弁護団事務局長 下迫田浩司




1. 岸和田生活保護裁判てどんな事件?


Aさん夫婦は、ご主人が30代後半、奥さんが40代前半で、2人暮らしです。2008年の春、Aさん夫婦は、岸和田市在住の奥さんのお母さんが高齢のため、今までの仕事を辞め、大東市から岸和田市に引っ越しました。しかし、ご主人が、中卒で運転免許がないこと、奥さんが、膝の持病があり立ち仕事ができないことから、夫婦共に就職先が見つからず、所持金が数百円になってしまいました。そこで、2008年5月、岸和田市に生活保護の申請をしました。ところが、岸和田市は、申請書さえ渡さず、門前払いをしたのです。

そこで、2008年6月24日、岸和田生活と健康を守る会が同行し、1回目の生活保護を申請しました。しかし、岸和田市は、同年7月1日、「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」という理由で、却下しました。

Aさん夫婦は、依然、就職先が見つからないため、同年7月7日、2回目の申請をしましたが、同年7月28日、「稼働能力の活用が図られるため最低生活維持可能」という同じ理由で、却下されました。

そこで、Aさん夫婦と岸和田生活と健康を守る会が、当事務所の十川弁護士の所に相談に来ました。そして、同年9月18日、岸和田市の却下を不服として、大阪府に審査請求をしました。

その後も、Aさん夫婦は、生活保護を申請し続けましたが、却下され、大阪府は、2009年6月3日、3日に1日の求職活動は、真摯な求職活動とは言えないとして、審査請求を棄却しました。

Aさん夫婦は、この間、日雇いや、奥さんのパートで生活をしていましたが、それだけでは生活ができないため、生活と健康を守る会に食料の援助を受けました。また、風呂に行くお金がないため、アパートの台所の水で体を洗っていました。Aさんは、就職先が見つからないことから、一時は自殺することも考えました。

そして、2009年7月31日、6回目の生活保護申請が認められ、生活保護が開始されました。



2. 何が問題なのでしょうか? 

このように、岸和田市は、Aさん夫婦が、最低生活ができないのをわかっていながら、5回も申請を却下しました。岸和田市は、以前、就職先の決まらない50代の独身男性には、生活保護を認めましたが、Aさんに対しては、頑なに生活保護を拒みました。
 
また、大阪府は、景気が急激に悪化し面接さえも受けられない状況であるにもかかわらず、3日に1日の求職活動は、真摯な求職活動とは言えないとして、棄却しました。Aさんは、面接の交通費を捻出できないため、自転車で行動できる岸和田市周辺しか、求職活動ができないという事情がありました。また、ハローワークも、不景気のため、Aさん夫婦に、毎日就職先を紹介することは不可能でした。


 

3. この裁判で求めていたことは・・・。

Aさんに生活保護が開始され、生活は安定しましたが、このような処分、裁決を容認すると、若年の失業者が生活保護を受けられない先例を作ってしまいます。そこで、2009年11月10日、岸和田市の却下処分の取消、及び損害賠償を求めて、大阪地方裁判所に提訴しました。




4. 判決は・・・。

2013年10月31日、大阪地方裁判所第7民事部(裁判長裁判官田中健治、裁判官尾河吉久、裁判官木村朱子)は、生活保護開始申請却下決定を取り消し、慰謝料等の損害賠償68万3709円の支払を岸和田市に対して命じる判決をしました。同年11月14日、岸和田市が控訴しなかったため、確定しました。

「仕事が見つからなければ、餓死しかないのか?」という問いに、「いや、そんなはずはない!」というまっとうな答えが得られた裁判でした。

みなさまのこれまでのご支援に感謝いたします。



弁護団等による合同声明



対応地域

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